目的 私が実験で用いているカルパスタチン遺伝子改変マウス、カルパスタチンノックアウトマウスおよびカルパスタチントランスジェニックマウスは、生存に関わるようなフェノタイプを示さないことが確認されているが(Takano et.al, JBC, 2005 , Higuchi et.al, JBC, 2005)、本学動物飼育棟においては繁殖が困難であった。このことから、本学動物飼育棟におけるマウスの繁殖成績の向上を目的として、実験動物提供元である理化学研究所脳科学総合研究センター・神経蛋白制御研究チームにおいて、すでに確立されたマウスの繁殖方法についての研究を通し、学内でのマウスの繁殖方法を検討した。
材料・方法 本学動物飼育棟において、実際の研究材料であるカルパスタチン遺伝子改変マウスと日本クレア社のC57BL/6Jマウスを繁殖・飼育することで繁殖成績の向上に最適な育成環境の模索および実現を試みた。また、「実験動物の技術と応用、入門編・実践編(日本実験動物協会編)」等を参考にマウスの繁殖に関する情報の収集を行った。
活動内容 理化学研究所脳総合研究センター・神経蛋白制御研究チームへの視察および動物飼育担当の方への面会を通して、本学動物飼育棟での問題点を検討した。その結果、動物繁殖において重要な因子の一つである光周期が不適切であることが判明した。このことから、一定の光周期を設定することが必要であると考え、「ナショナルタイムスイッチ TB 43(松下電工)」を購入し、動物飼育棟に設置することで繁殖成績の向上を試みた。タイムスイッチは自動点灯・消灯機能により12時間の光周期で稼動した。
結果と今後の展望 光周期を12時間とすることで性周期が安定し、マウスの妊娠および出産が確認された。このことから、本学動物飼育棟においては人工的な光周期の設定により繁殖成績の向上が実現できることが明らかとなった。今後はこの周期を継続し、実験に供与できるのに十分な個体数を得ることを目標とする。
今回のIAGE事業を通して 実験材料の十分な供与は、計画通りの実験を行う上で極めて重要である。今回のIAGE事業を通して、繁殖方法の確立についてしっかりと研究できたことは、今後の研究を進める上で有意義なものであった。今後もぜひ、このような事業を続けていって欲しいと思う。また、今回の活動において、タイムスイッチの設置でご協力いただいた神経生物学研究室の黒川先生および本研究室の斉藤助手に感謝いたします。
|